突然の病気や手術、それに際し家族に渡される同意書の存在はそれがたとえ紙一枚でも石板のように重いです。
きっとこのページに来られた方は、なんらかの手術や治療を前に迷っていることがあるからだと思います。
セカンドオピニオンを必要とするのは何も難病児だけではありません。
ご家族やご自分の大きな病気に関する情報を求め、理解を深めることは大切です。
何より、情報過多な昨今、信頼できる情報を取捨するための判断材料には価値があります。
先日の胃ろうの再増設について書いた記事の中で、「セカンドオピニオンに関しては、別の記事で詳しく書けたらと思っています」とお伝えしていました。
実際に我が家が、セカンドオピニオンを受けたときの話をまとめてみようと思います。

そもそもセカンドオピニオンとは
「こういう時お医者さんに知り合いがいれば・・・」を実現
平たく言えば、セカンドオピニオンは「別の分野に詳しい、お医者さんの知り合い」を、制度として持てる仕組みだと私は思っています。
セカンドオピニオンとは、今かかっている担当医とは別の医師に、診断や治療方針について意見を求めることです。
よく誤解されがちですが、これは「転院」とは違います。
今の主治医のもとで治療を続けることを前提に、判断材料を増やすために、もう一人の専門家の意見を聞く、という位置づけのものです。
一般的には、今の担当医に紹介状(診療情報提供書)と、血液検査や画像診断などの検査データを用意してもらい、セカンドオピニオン外来のある病院に申し込む、という流れになります。
紹介状の作成には健康保険が使えますが、セカンドオピニオンそのものは自由診療(全額自己負担)で、相場としては30分〜1時間ほどの相談で3万円〜5万円程度かかることが多いようです。
金額は病院によってかなり差があるので、申し込み前に確認しておくと安心です。
「今の先生に悪いのでは」と気を遣ってしまう方もいるかもしれませんが、セカンドオピニオンはすでに広く一般的な制度です。
担当医にきちんと目的を伝えれば、多くの場合、資料の準備にも快く協力してもらえます。
胃ろう再増設と、新たに提案された「胃拡張手術」
勧められた手術に同意できない
以前の記事でお伝えした通り、胃ろうの瘻孔がうまく塞がらず、再増設が必要になった時期がありました。ところが、詳しい説明を聞く中で、単純な再増設だけではなく「胃拡張手術」もあわせて勧められることになったのです。
理由は、今の胃ろうを一度埋めて造り直しても、小さな胃の範囲では、お腹の厚みが十分なところを探すのが難しいこと。容量が小さい分、また同じように漏れやすくなる可能性が高いこと。
だから、胃自体を大きくする手術もあわせて検討してはどうか、という提案でした。
経験値の高い医師の意見を聞きたい

説明を聞いて、まず気になったのは、この胃拡張手術がどれくらい一般的な手術なのか、という点でした。
担当の先生に確認すると、全国でもおよそ10例ほど。今の病院では過去に2例しか行われていない手術だとのことでした。
つまり、標準的な選択肢というより、かなり限られた症例の手術だということです。
もう一つ気になったのは、私が一番知りたかった「ダンピング症候群(食後に急激な血糖の変動などが起こる症状)が改善するかどうか」について、明確な答えがもらえなかったことでした。
前例の子たちはダンピングの有無自体が確認されていない、という説明で、「多分大丈夫じゃないかな」という程度の感触しか得られませんでした。
息子の今後に関わる手術を、こういう不確かな見通しのまま決めていいのだろうか。
そう思ったとき、セカンドオピニオンを受けようと決めました。
セカンドオピニオンを申し込むまで
コロナ禍転じて福となる
担当の先生にセカンドオピニオンを希望する意思を伝えると、快く対応してもらえました。
当時はコロナ禍でした。県をいくつもまたぐ移動に不安もあります。
しかし、感染症対策の影響で、あちこちの大きな病院がオンラインでのセカンドオピニオンに対応し始めていました。
これは正直かなり助かりました。
長距離移動の負担や費用もかからず、入院中の息子のそばを長時間離れる必要もなくなりました。
申し込み後、案内や必要書類の説明が届き、面談にはZOOMを使うとのこと。
当時の私にとってはまだ馴染みのないツールで、慌ててダウンロードして使い方を確認したのを覚えています。

準備した「2列ノート」
限られた相談時間を無駄にしないために、事前にノートを1冊用意しました。
使い方はシンプルで、左のページには胃ろう増設からの治療の経過や手術の流れをまとめました。
右のページは空白にしておいて、面談中の質問と、先生からの回答を書き込めるようにしておきました。
セカンドオピニオンの時間は無駄にしたくありません。
頭の中だけで整理は出来ない前提です。
動揺すると、聞き逃したり、説明された内容を後から思い出せなかったりします。
左右で「これまでの経過」と「その場でのやり取り」を分けておくと、限られた時間の中でも落ち着いて話ができますし、なんなら矢印で時期を示せます。
ノートの作成は、セカンドオピニオンに限らず、訪問看護師さんなどの面談など、幅広い場面で使えるのでおすすめしたい方法です。
オンラインセカンドオピニオン当日
結論ファースト
ノートと、単位の読み方まで調べ直した最新の血液検査結果を手元に置いて、セカンドオピニオンに臨みました。
てっきりこちらから質問していく形式だと思っていたのですが、始まってすぐ、先生からこう言われました。
「診断結果を拝見しましたが、息子さんのケースでは胃ろうの再増設だけで十分だと思います」
正直、拍子抜けするくらい早い段階での、しかも予想していなかった答えでした。
「胃が小さいケースは見てきましたが、40ほどの容量があって、そもそも胃ろうの増設ができているのであれば……。うちで胃の拡張手術をするのは、容量が大きくならないお子さんです」とのことでした。
気になっていたダンピング症候群についても聞いてみましたが、
「胃を拡張する手術をしても、ダンピングが治るわけではありません。出るものは出ます」
という、はっきりとした答えが返ってきました。
加えて、栄養チューブが胃を傷つけて出血を繰り返している状態については、
「早めに、きちんとした胃ろうにしてあげたほうがいい」
ともアドバイスをもらいました。
さらに、今の主治医の先生方への申し送りも、その場で申し出てくださいました。
「そっちの先生がたには僕から言っておきます」
こちらが用意していた質問の多くが、想定よりずっと早く、明確な答えとともに終わってしまうくらい、率直なやり取りでした。

セカンドオピニオンを終えて
面談のあと、病棟に戻って、担当の先生に結果を伝えました。
胃ろうの再増設だけで進める方向になり、私の中で必要性を見極められずにいた胃拡張手術は見送ることになりました。
もう一人の専門家の目を通し、話したことで、「この治療方針で進んで大丈夫だ」と、自分の中で納得して決断できるようになったのです。
おわりに
セカンドオピニオンは、今の主治医を信用していないから受けるものではないと思っています。
専門家ではない家族が手術の判断をする。これがあまりに重いです。
迷う心に蓋をして、結論だけ出してしまえば安心できるかと言えば、そんなことはありません。
自分のものではない、わが子の命と将来を自分が決めてしまう。
そこでできる判断材料を増やすための、選択肢のひとつです。
私たちの場合は、結果的に手術の一部を見送るという判断につながりましたが、逆に「今の方針で間違いない」と背中を押してもらえるケースも、きっと多いはずです。
大きな治療方針で迷っている方がもしいたら、「セカンドオピニオンを申し込みたい」と担当医に伝えてみましょう。もちろん、迷わない人や状況もあります。
ただ、間違いなく言えるのは、迷うことはおかしくありません。
情報を集める手段のひとつに入れてみてもらえたらと思います。


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