医療的ケア児は全国に約2万人。「うちだけじゃない」とわかる数字と、増えている本当の理由

医ケア・難病児

はじめに

医師
医師

「お子さんには医療的ケアが必要です」

そう言われた日のことを覚えていますか。

目の前の先生は、「風邪ですね、ムコダインを処方しましょう」位の感覚で言ってきます。
もちろん先生に悪気はありません。患者の容体から最適な医学上必要な判断をしています。
そして、多くの患者家族へ幾多の同じ話を説明をしていることでしょう。
しかし親にとっては、人生初の経験なんです。

頭が真っ白になって、何から考えればいいのかわからない。 ネットで調べても、出てくるのは厳しい現実ばかり。 そしてふと思うんです。

「そんな重い病気の子、うちだけなんじゃないか」

そういった考えが浮かびませんか?私は浮かびました。

この記事では、医療的ケア児が日本にどれくらいいるのか、数字でお伝えします。 どんなケアがあるのか。 なぜ今増えているのか。

この記事を読めば、「うちだけじゃない」と数字で実感できます。 そして、家族や親戚に説明するときに使える、3つの数字を知ることができます。

医療的ケア児って、どんな子のこと?

2021年にできた「医療的ケア児支援法」では、こう決められています。

  • 医療的ケアとは:人工呼吸器による呼吸の管理、たんの吸引、そのほかの医療行為
  • 医療的ケア児とは:日常生活と社会生活のために、いつも医療的ケアを受けることが欠かせない子ども

どんなケアがあるの?

国の調査(2019年、家で暮らす医療的ケア児者の家族843人)で、必要なケアを聞いています。 ひとりで複数のケアを受けている子も多いです。

ケアの種類割合
経管栄養(鼻のチューブ、胃ろう、腸ろう)74.4%
たんの吸引69.0%
気管切開など41.8%
ネブライザー(吸入)40.1%
酸素(吸入)37.5%
人工呼吸器33.0%
導尿8.4%

いちばん多いのは経管栄養です。 口から十分に食べられない子に、チューブで栄養を入れるケアですね。

「寝たきり」とは限らない

医療的ケア児というと、寝たきりの子を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、歩いたり走ったりできる医療的ケア児もいます。『動ける医ケア児』と呼ばれています。
うちの息子も、立って歩けないころからよく動き回っていました
ケアの中身も子どもの姿も、本当にさまざまです。

医療的ケア児は、何人いるの?

全国に約2万人

国の推計では家で暮らす医療的ケア児(0〜19歳)は、2023年で約2万人(推計2万382人)です。

確率にすると「約1,000人に1人」

2023年の0〜19歳の人口は、約1,967万人。 単純に割り算するとこうなります。

子ども約1,000人に1人が医療的ケア児。

人口10万人の市なら、単純計算で16人ほど。
小学校がいくつもあるごくふつうの地域に、十数人いる計算です。

「1,000人に1人」と聞くと少なく感じるかもしれません。 しかしまちの中に、同じように暮らしている家族がいます。
人口当たり1,000人に1人とは『高校球児』の人数が近いといいます。だいぶ身近にかんじられるのではないでしょうか?
『高校球児』とは違い、外出が大変な場合が多く、見かける頻度が少し下がる。それだけのことです。
私は、この数字にほっとしました。

しかも、増えている

ここが大事なところです。

年人数(推計)
2005年9,987人
2023年20,382人

18年で、約2倍に増えました。

子どもの数はこの間ずっと減っています。 それなのに医療的ケア児は増えているんです。

人工呼吸器を使う子はさらに増え方が大きく、直近10年ほどで約2.3倍になっています。

なぜ、医療的ケア児は増えているのか?

結論から言います。 医療が進んで、昔なら助からなかった命が、助かるようになったからです。

赤ちゃんが助かる国になった

生まれてから4週間以内に亡くなる赤ちゃんの割合(新生児死亡率)を見てみましょう。

年出生1,000人あたり
1950年27.4人
1980年4.9人
2005年1.4人
2023年0.8人

1950年と比べると、約34分の1。 1980年と比べても、約6分の1です。

2018年のユニセフの報告では、日本は新生児死亡率が世界でいちばん低い国でした。 日本は今、赤ちゃんの命がとても助かりやすい国なんです。

つまり、昔は助けることがむずかしかった子どもたちの命が助かるようになった。
そして、ケアが必要ではあっても退院可能になります。
家で医療的なケアを受けながら、家族と共に毎日を過ごせ、学校にも行ける。

小さく生まれる赤ちゃんも、心臓病の赤ちゃんも

2,500g未満で生まれる赤ちゃんを、低出生体重児といいます。 その割合は、1975年の5.1%から、2019年には9.4%になりました。 小さく生まれても、育つことができるようになったからこそ、ケアが必要な子もいます。

生まれつき心臓に病気がある赤ちゃんは、およそ100人に1人。 手術の技術が進み、うちの息子のように、何回も手術を受けて大きくなる子が増えました。

「増えている」のは、命がつながった証

医療的ケア児が増えている。 それは裏を返せば、こういうことだと私は思っています。
生きようとした子どもたちと、それを支えた医療が、命をつないだ数。
息子は生きようとする力と、たくさんの人の手に支えられて自宅にいます。

こども病院には当然…

街の産科から子供病院へ

息子の心臓病がわかったのは、妊娠後期の健診でした。

いつも混んでいて、さっと終わる妊婦健診。 その日は、エコーがやけに長かったです。
先生の雑談もやけに多い。
「エコーというのはこうして赤ちゃんの肋骨で遮られるんです。だから、見づらいところもあるんですよ」
とか、肋骨に遮られてできる縞々の影を私に見せながら説明している。

ちいさな街にある、唯一のこぎれいで人気な産院。市内の少なくない妊婦さんがここに通うと言われてました。そして体重が増え過ぎると、手短にめっちゃ怒られる。
要は聞かれて説明することはあっても、そんなに無駄話はしません。待合室にはたくさんの妊婦さんが待っているからです。

(不自然過ぎる…)当然そう思いました。
「あのぅ…何かあるんですか?」思わず聞くと、先生は「もっと設備の整った病院で診てもらってください」とだけ言い、会計前に紹介状と共に大きな病院の予約まで確保されました。

予約が取れた(取られた)のは、4日後。すぐじゃなくてよかった、と思う気持ちもありました。
しかし、不安で不安でたまらない4日間を過ごしました。
精神衛生上こちらの方が良くなかったと気づいたのは、受診した後でした。

病院のロビーで見た景色

大きなこども病院の広いロビーには、たくさんの子どもと家族がいました。
鼻にチューブが入った子。 歩行器の子。 車いすに関しては大きな物もあれば、電動で動くものまでさまざまでした。

「ああ、うちだけじゃないんだ」
そのとき、はじめてそう思えた気がします。正直ホッとしました。

帰りに図書館で、子ども向けの「難病の子どもを知る本」を借りて読みました。 悲しくても受け入れて、支えていくためには、知識が必要だと感じたからです。

数字に対して思うこと

あのころの私は、さほど数字を気にしませんでした。
単純に、私はどうしようもないほど文系です。そして、『自分の身に起こってしまった時点で、確率上の数字がどうであれ100%だ』そう思っていました。

街の産院からこども専門病院に通うようになり、いきなり世界が変わったことに戸惑わなかったわけがありません。しかし、目の前の息子と、病院で出会う人々が支えになっていました。

今調べてみれば、全国に約2万人の医療的ケアの子がいる。 子ども1,000人に1人。
そして、医療が進んで、命がつながる子が増えている。そこにうちの息子も含まれているということでした。

補足:家族や親戚に説明するときの「3つの数字」

病気や医療的ケアに関して、家族や親戚に説明する場面が出てきます。 でも自分も混乱しているのに、うまく話すのは本当にむずかしいですよね。

そんなときは、この3つの数字を使ってみてください。

説明に使える3つの数字

  1. 全国に約2万人いる
    「病気は色々だけど、医療的ケアが必要な子は、全国に約2万人いるんだって」
  2. 子ども約1,000人に1人
    「子ども1,000人に1人くらい。いなくはない。実際こども病院ではよく見る」
  3. この20年ほどで約2倍に増えた
    「医療が進んで、助かる赤ちゃんが増えたから」

説明するときのコツ

  • 「誰のせいでもない」を最初に伝える
    病気やケアの原因を、誰かのせいにする言葉が出てくることがあります。 先に「医療が進んで、助かるようになった命」と伝えると、話の向きが変わりやすいです。
  • 一度で全部わかってもらおうとしない
    自分だって、すぐには受け止められなかった。 家族も同じです。少しずつで大丈夫。
  • 主治医の説明の場に、一緒に来てもらう
    親の口から説明するより、医師から直接聞くほうが伝わることもあります。
    私はこれが一番おすすめだと思っています。
  • ケアの手順を、実際に見てもらう
    「怖い」の多くは「知らない」から生まれます。 経管栄養やたんの吸引を一度見てもらうだけで、見方が変わることもあります。

同じ立場の人とつながる方法

まとめ:あなたとお子さんは、ひとりじゃない

この記事のポイント

  • 医療的ケア児は、毎日の生活に医療的ケアが欠かせない子ども
  • 家で暮らす医療的ケア児は、全国に約2万人(2023年)
  • 子ども約1,000人に1人
  • 2005年からの18年で、約2倍に増えた
  • 増えたのは、医療が進んで、助かる命が増えたから

不安でどうしたらいいかわからない。 それは、あなたが弱いからではありません。 はじめての道を歩いているんだから、当たり前です。
ですが、その道を歩いている子は全国に約2万人おり、約2万組の家族がいることになります。

数えきれないほど多い、とは言いません。でも、探せば必ずあなたの前や後ろに見つかります。
あなた自身が誰かにとってそうであるように。

参考にした資料

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